南カリフォルニア(南加)福島県人会など米国ロサンゼルスにある福島、宮城、岩手三県の県人会を中心とする非営利団体「LOVE TO NIPPON PROJECT(ラブ・トゥー・ニッポン・プロジェクト)」は二〇一九年秋、米国市民による福島視察団を派遣する。参加者を募り、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興状況や食、観光を体感してもらう。県によると、在外県人会が公募による来県団を組むのは初めて。
同団体はロサンゼルスやカリフォルニア州の日系社会や一般市民から希望者を募り、二〇一九年九月下旬ごろ四日間程度で県内を巡る。Jヴィレッジ(楢葉・広野町)など浜通りの復興関連施設を訪ね、福島の現状を学ぶ。牛肉や果物などの県産食材を味わったり、復興に向かう県民と交流するプログラムなども検討している。
同団体は震災後、毎年三月十一日の前後にロサンゼルス市警本部などで追悼集会を催している。昨年十月に内堀雅雄知事が現地で復興セミナーを開き、福島への理解を訴えたのを機に、視察団を送る機運が高まったという。
計画は下見のため来県した南加県人会前会長の紙本正光さん(68)=大阪府出身=と妻の典子さん(64)=三島町出身=、団体代表の鵜浦真紗子さん(63)=岩手県出身、南加岩手県人会長=らが十四日、県庁で鈴木正晃副知事と懇談し、明らかにした。米国では県産野菜の一部や原乳などの輸入規制が続いている。県は米国市民に福島の安全性や魅力を発信する機会と捉え、実現に協力する方針。
紙本さんらは今回、いわき市のワンダーファームや楢葉町の日本原子力研究開発機構(JAEA)遠隔技術開発センターなどを訪れた。来春の追悼集会で視察団派遣を周知する。紙本さんは「訪問先の様子や研究開発の進歩を通し、復興が非常に進んだと感じた」と語った。鵜浦さんは「初回の派遣を成功させ、持続的活動にしたい」と意欲を示した。
視察団の訪問先は県観光物産交流協会が手配する。協会は復興へと歩む県民の姿を伝える「ホープツーリズム」を進めている。高荒昌展理事長は「外国人向け旅行商品の見本となるツアーを提案したい」と意気込む。